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脱Excelの進め方|中小企業が業務システム化を判断する基準

約6分
脱Excelの進め方|中小企業が業務システム化を判断する基準

「受注管理も在庫も顧客リストも、全部Excelでやっています」——中小企業のご相談では、いまも本当によく聞く話です。そしてたいてい、そのあとにこう続きます。「そろそろ限界かもしれない、とは思っているんですが」。

Excelは優秀なツールです。導入コストはほぼゼロ、誰でも触れて、思いついた形にすぐ変えられる。多くの会社にとって、業務を回す最初の土台としては十分すぎるほど機能します。問題は、その土台のまま会社が大きくなったときに起きます。

この記事では、「脱Excel」を検討すべきサインと、システム化に踏み切るかどうかの判断基準、そして進めるときの手順を整理します。

「Excelが悪い」わけではない

まず前提として、Excelをやめること自体が目的ではありません。実際、脱Excelを掲げてシステムを導入したのに、結局現場がExcelに戻ってしまう会社もあります。

Excelが強いのは、次のような場面です。

  • 一人、または少人数で完結する作業
  • 手順がまだ固まっておらず、頻繁に形を変えたい業務
  • 集計や分析を、その都度自由に行いたいケース

逆に言えば、この条件から外れてきたときが、見直しのタイミングです。「Excelだから駄目」ではなく、「この業務にExcelは合わなくなってきた」という見方をすると、判断を誤りにくくなります。

脱Excelを検討すべき5つのサイン

次のような症状が出ていたら、業務の規模がExcelの適性を超え始めています。

1. 同じ数字が複数のファイルに存在する

受注一覧、請求用、在庫表——同じ情報が別ファイルに転記されている状態です。転記が発生している時点で、必ずどこかでズレます。そしてズレたとき、どれが正しいのか誰にもわかりません。

2. 「最新版」がどれかわからない

受注管理_最新_v3_修正版.xlsx のようなファイル名に心当たりがあれば、すでに危険信号です。共有フォルダ上で複数人が同時に触ると、上書き事故も起こります。

3. 特定の人しか触れない

複雑な関数やマクロが組まれていて、作った本人しかメンテナンスできない。その人が退職したら誰も直せない——中小企業でもっとも多いリスクがこれです。

4. 集計に毎月まとまった時間がかかっている

月末に数日かけて各部署のファイルを集め、手作業で結合している。この時間はそのまま人件費ですから、システム化の費用対効果を計算する材料にもなります。

5. 外出先やスマートフォンから見られない

現場や営業先から在庫や進捗を確認したいのに、事務所のPCを開かないとわからない。この不便が受注機会の損失につながっているなら、優先度は一気に上がります。

該当が1〜2個なら、まずはExcelの使い方を整えるだけで改善することもあります。3個以上重なっているなら、システム化を検討する段階と考えてよいでしょう。

いきなり全部をシステム化しない

脱Excelでもっとも多い失敗が、「この機会に全業務をまとめてシステム化しよう」と広げすぎることです。

範囲が広がるほど費用も期間も膨らみ、現場のヒアリングも増え、稼働までに1年以上かかることも珍しくありません。その間に業務のほうが変わってしまい、完成した頃には合わないシステムができあがる、というのはよくある話です。

おすすめは、次の条件に当てはまる業務を1つだけ選んで始める方法です。

  • 毎日または毎週、必ず発生する
  • 複数人が関わっていて、転記や共有で困っている
  • 数字やステータスの管理が中心で、判断の余地が少ない

受注管理、在庫管理、案件の進捗管理あたりが該当しやすい領域です。まず1つをシステム化し、現場に定着することを確認してから次に広げる。この順番が結果的に一番早く、無駄も出ません。

「既製品」か「自社開発」かの判断

システム化を決めたあとの分岐が、パッケージ・SaaSを使うか、自社に合わせて開発するかです。

既製品(SaaS・パッケージ)が向くケース

会計、給与、勤怠、名刺管理のように、どの会社でもやることがほぼ同じ業務です。この領域はすでに完成度の高いサービスが揃っており、自社開発する理由はほとんどありません。月額数千円から始められ、法改正への対応もベンダー側が行ってくれます。

自社開発が向くケース

自社の商習慣や工程が競争力になっている業務です。独自の見積ロジック、特殊な工程管理、取引先ごとに異なる納品フローなど、既製品に合わせると強みが削られてしまう部分がこれにあたります。

判断に迷ったら、「この業務のやり方を、既製品に合わせて変えられるか」と問いかけてみてください。変えられるなら既製品。変えると商売そのものが弱くなるなら、システム開発を検討する価値があります。

なお、両方を組み合わせるのが現実的な解になることも多いです。会計は既製品、独自の受注管理だけ自社開発、というように役割を分けると、費用も抑えられます。

進め方の手順

実際に着手するときは、次の順番で進めると失敗が減ります。

1. 現状のExcelをそのまま持ち寄る

きれいに作り直す必要はありません。実際に使っているファイルこそ、業務の実態が一番よく表れています。項目名の揺れや、備考欄に書かれたメモも重要な情報です。

2. 誰が、いつ、何を入力しているかを書き出す

システムの設計で重要なのは機能一覧よりも、入力のタイミングと担当者です。ここが曖昧なまま作ると、「誰も入力しないシステム」ができあがります。

3. 必須要件と、あったら嬉しい要件を分ける

初回リリースには必須要件だけを入れます。「あったら嬉しい」は運用してから判断すると、本当に必要だったものだけが残ります。

4. 小さく作って、実際の業務で使ってみる

紙の資料上でどれだけ議論しても、使ってみないとわからないことは必ず出てきます。早い段階で現場に触ってもらい、修正する前提で進めましょう。

5. 移行期間を設ける

いきなりExcelを廃止せず、しばらく併用します。ただし「いつまで併用するか」の期限は最初に決めてください。期限がないと、いつまでもExcelが残り続けます。

費用と補助金について

システム化の費用は、対象範囲と作り方によって大きく変わります。既製品の導入なら初期費用と月額利用料が中心ですが、自社開発の場合は要件の量に比例して初期費用が積み上がります。

判断材料としておすすめなのは、「いま、その業務に月何時間かかっているか」を先に出しておくことです。月20時間の手作業がなくなるなら、年間の人件費換算と比べて投資回収の目安が立ちます。

また、業務システムやITツールの導入には、IT導入補助金をはじめとする支援制度を利用できる場合があります。対象となる経費や要件は年度ごとに変わりますので、検討の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。

まとめ

脱Excelは、Excelをなくすことが目的ではなく、業務が回らなくなる前に土台を入れ替える取り組みです。

  • Excelは少人数・流動的な業務には今も最適。無理に捨てない
  • 転記・最新版不明・属人化などのサインが3つ以上重なったら検討時期
  • 全部を一度にやらず、頻度が高く困っている業務を1つだけ選ぶ
  • 汎用業務は既製品、自社の強みが出る業務は自社開発
  • 移行は併用期間を設けつつ、終了期限を最初に決める

「どこから手をつけるべきか」の判断だけでも、外から見ると整理しやすいものです。現在お使いのExcelを拝見しながら、システム化すべき範囲と概算費用をご提案することもできますので、お気軽にご相談ください。

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