
ホームページを制作したあと、多くの会社が制作会社と「保守契約」を結びます。金額は月数千円から数万円まで幅がありますが、ご相談を受けるなかでよく聞くのが「何をしてもらっているのか、正直よくわからない」という声です。
請求書には「サイト保守費」とだけ書かれていて、内訳が見えない。担当者に聞いても「何かあったときのため」と言われる。これでは、高いのか安いのか判断のしようがありません。
この記事では、保守・運用費用の中身を分解したうえで、自社にとって必要な範囲をどう見極めるかを整理します。
「保守」と「運用」は別のもの
まず、よく混同される2つの言葉を分けて考えます。ここを分けるだけで、見積もりの読み方がかなり変わります。
保守は、サイトが正常に動き続けるための守りの作業です。サーバーの稼働監視、システムやプラグインの更新、バックアップ、障害対応など、表からは見えないけれど止まると困る部分を指します。
運用は、サイトの中身を育てる攻めの作業です。お知らせの投稿、ページの追加や修正、写真の差し替え、アクセス解析にもとづく改善などが含まれます。
この2つは性質がまったく違います。保守は「やらないと事故が起きる」もの、運用は「やらないと成果が出ない」もの。どちらを削るかを考えるなら、まず保守は残す、というのが基本的な考え方です。
保守費用に含まれる主な項目
一般的な保守契約に含まれるのは、おおむね次のような作業です。
- サーバー・ドメインの管理:契約更新、設定変更、SSL証明書の維持
- CMSやプラグインの更新:WordPressなどを使っている場合の定期アップデート
- バックアップ:定期的にデータを取得し、復旧できる状態を保つ
- 稼働監視:サイトが落ちていないかを継続的に確認する
- 障害対応:表示崩れやエラーが起きたときの復旧作業
- 軽微な修正:文章や画像の差し替えなど、時間のかからない作業
このうち特に見落とされがちなのが、CMSの更新です。WordPressのようなシステムは脆弱性が見つかるたびに修正版が公開されます。放置したサイトが改ざんされ、気づいたときには検索結果に警告が出ていた——こうした事例は決して珍しくありません。復旧には作り直しに近い費用がかかることもあります。
月額の保守費は、この「事故が起きない状態を維持するコスト」だと考えるとわかりやすいと思います。
費用の幅はどこから生まれるのか
保守費用の相場を一言で言うのは難しく、それはサイトの構成によって必要な作業量が大きく変わるからです。金額差の主な要因は次の3つです。
1. サイトの作り方
HTMLだけで作られた静的なサイトと、WordPressのようなCMSを使ったサイト、独自開発のシステムが動いているサイトでは、必要な保守作業がまったく違います。動く部分が多いほど、更新や監視の手間は増えます。
2. 対応範囲と対応速度
「平日日中のみ、数営業日以内に対応」と「障害発生時は即時対応」では、体制の作り方が変わるため費用も変わります。ECサイトや予約システムのように停止が売上に直結する場合は、手厚い契約が必要になります。
3. 更新作業がどこまで含まれるか
月に何回までの更新を含むのか、含まれない作業は都度いくらなのか。ここが曖昧なまま契約すると、「思ったより追加費用がかかる」という不満につながります。
自社に必要な範囲をどう決めるか
すべてを外注する必要はありません。判断の目安として、次の順に考えてみてください。
1. 止まったときの影響を見積もる
サイトが3日間表示されなくなったとき、何が困るでしょうか。問い合わせが途切れるだけなのか、予約や受注が止まるのか。影響が大きいほど、保守にかける費用は正当化されます。逆に、実質的な影響が小さい会社案内サイトであれば、最低限の構成で十分な場合もあります。
2. 更新を自社でできる体制があるかを見る
お知らせの投稿程度なら社内でできる、という会社は多いはずです。その場合、更新作業は自社、技術的な保守だけ外部、という切り分けが合理的です。ただし「できる人が一人だけ」という状態は、その方が異動・退職した時点で更新が止まります。担当を分散できるかまで含めて考えてください。
3. 改善したい意思があるかを確認する
公開後に手を入れる予定がないなら、運用支援は不要です。一方で問い合わせを増やしたい、検索順位を上げたいという目的があるなら、SEO・マーケティング支援を含む運用の契約を検討する価値があります。保守と運用を同じ会社に任せるか分けるかは、相性と体制次第です。
契約前に確認したい項目
見積書を受け取ったら、次の点を確認しておくと後のトラブルを避けられます。
- 作業範囲の明文化:含まれる作業と、別途費用になる作業の線引き
- 対応時間と目標復旧時間:受付時間、休日対応の有無、連絡手段
- バックアップの取得頻度と保管場所:どこまで巻き戻せるのか
- 月内の更新回数の上限:超過した場合の料金
- 報告の有無:作業内容が定期的に共有されるか
- 解約時の扱い:ドメイン・サーバー・データの移管に応じてもらえるか
最後の項目は特に重要です。制作データやサーバーの管理権限を制作会社が握ったままだと、会社を変えたくても動けなくなります。ドメインとサーバーの契約名義は自社にしておく——これは制作を依頼する段階で決めておきたいポイントです。
まとめ
ホームページの保守・運用費用について、押さえておきたい点を整理します。
- 「保守(守り)」と「運用(育てる)」は別物として切り分けて考える
- 保守の中心はCMS更新・バックアップ・監視・障害対応。事故を防ぐためのコスト
- 費用の差は、サイトの構成・対応速度・更新作業の含まれ方から生まれる
- サイトが止まったときの影響の大きさが、かける費用の判断基準になる
- 契約前に作業範囲、対応時間、解約時のデータ移管を必ず確認する
保守費は「なんとなく払い続けるもの」になりがちですが、内訳を一度確認するだけで、必要な部分と削れる部分がはっきりします。契約更新のタイミングは、その見直しに適した機会です。
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