
福岡のように海外からの直行便やクルーズ船が入る街では、「気がついたら外国人のお客様が増えていた」という声をよく聞きます。ただ、その多くは偶然の来店です。こちらから何も発信していないのに来てくれているということは、裏を返せば、まだ届いていないお客様がそれ以上にいるということでもあります。
インバウンド集客というと、多言語サイトの制作や翻訳の話から始まりがちですが、実際にはもっと手前にやるべきことがあります。この記事では、飲食店・宿泊施設・小売店の事業者が、限られた予算と人手のなかで何から手をつければよいかを、優先順位をつけて整理します。
勝負は「来店前」にほぼ決まっている
訪日客の行動は、日本人の消費行動とは少し違います。旅行前に大枠の計画を立て、現地では「今いる場所の近くで、今から入れる店」をスマートフォンで探す、という流れが一般的です。
つまり、お客様があなたの店を見つけるのは、店頭ではなく画面の中です。そこで得られる情報が少なければ、たとえ目の前を歩いていても候補から外れてしまいます。逆に言えば、Web上の情報を整えるだけで、広告費をかけずに拾える来店機会がまだ残っているということです。
判断されているのは、主に次の3点です。
- ここは何の店で、いくらぐらいかかるのか
- 今日・今から入れるのか、予約は必要か
- 自分たちの言語や食習慣に対応してもらえそうか
優先順位1:Googleマップの情報を整える
多言語サイトより先に取り組むべきなのが、Googleビジネスプロフィール(Googleマップ上の店舗情報)です。訪日客の多くが最初に開くのが地図アプリだからです。
最低限、次の項目を見直してください。
- 営業時間と定休日が最新か(祝日や臨時休業も反映されているか)
- 写真が十分にあるか。特に外観、店内、実際の料理や商品
- 業種カテゴリが正しく設定されているか
- 電話番号と予約リンクが機能しているか
写真は言語を問わず伝わる情報なので、費用対効果が最も高い投資です。暗い写真や10年前の外観のままになっていないか、一度確認してみてください。口コミへの返信も、英語で一言添えるだけで印象が変わります。詳しい進め方はマーケティング・SEO支援のページでも触れています。
優先順位2:自社サイトに「英語で答える1ページ」を作る
いきなり全ページを多言語化する必要はありません。まずは、訪日客が知りたいことだけをまとめた英語ページを1枚作るところから始めるのが現実的です。
そのページに載せるべき内容は、おおむね決まっています。
- 何を提供している店か(写真と短い説明で)
- 価格の目安。サービス料やお通し代など、海外の方が戸惑いやすい費用は明記する
- 場所とアクセス方法。最寄り駅からの徒歩ルート、目印になる建物
- 予約が必要かどうか、予約の方法
- 支払い方法(クレジットカード、電子マネー、現金のみ など)
- ベジタリアン対応やハラール対応、アレルギー表示の有無
このページが1枚あるだけで、問い合わせの手間も、当日のミスマッチも減ります。1ページで手応えを感じてから、必要に応じて範囲を広げていけば十分です。多言語サイトの構造そのものを見直したい場合は、Web制作の観点から設計を検討することをおすすめします。
「翻訳すれば伝わる」わけではない
インバウンド対応でよくある失敗が、日本語の原稿をそのまま機械翻訳して終わりにしてしまうことです。文法上は正しくても、前提となる文化が共有されていないと意味が通じません。
たとえば「お通し」「席料」「二時間制」「食べ放題のラストオーダー」といった仕組みは、そのまま訳しても伝わりにくい代表例です。訳すのではなく、何のための費用でいくらかかるのかを説明する、という発想に切り替える必要があります。
また、住所の表記も要注意です。日本の住所は海外の方には読み解きにくいため、地図リンクや「〇〇駅から徒歩5分、△△の向かい」といった目印を併記したほうが確実です。
SNSと口コミは「増やす」より「拾える形にする」
SNSに力を入れる前に、まずは自然に投稿してもらえる状態を作るほうが効率的です。
- 店名のローマ字表記を統一する(表記がぶれると検索でまとまらない)
- ハッシュタグを店内やレシートに小さく掲示する
- 撮影可の場所を明示する
- 良い口コミには短くても返信する
訪日客の情報源は、旅行前はSNSや動画、現地では地図アプリと口コミ、という組み合わせが多く見られます。自社で毎日発信し続けるより、来てくれたお客様の投稿が積み上がる仕組みを作るほうが、少人数の店舗には現実的です。
受け入れ体制もセットで考える
Web上の準備が整っても、店側の対応が追いつかなければ、口コミで評価を落としかねません。集客と同時に、最低限の受け入れ準備も進めておきましょう。
- 多言語メニュー(写真付きなら翻訳の負担も減ります)
- キャッシュレス決済への対応
- スタッフが困ったときに使える定型フレーズの用意
- 翻訳アプリを使うことを前提にした案内の工夫
完璧な語学対応は必要ありません。「困ったときにどうするか」が決まっているだけで、現場の心理的な負担は大きく下がります。
まとめ
インバウンド集客は、大がかりな多言語サイトを作らなくても始められます。順序としては、Googleマップの情報整備 → 英語1ページの用意 → 予約と決済の導線整備 → SNSと口コミが積み上がる仕組み、という流れが取り組みやすいはずです。
大切なのは、翻訳の量を増やすことではなく、お客様が来店前に知りたいことへ確実に答えることです。まずは自店の情報を外国人観光客の目線で一度見直してみてください。何から手をつけるべきか判断に迷う場合は、お問い合わせからご相談いただければ、現状に合わせた優先順位を一緒に整理します。
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